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IgG抗体Fabフラグメントの合成 - 株式会社セルフリーサイエンス|コムギ無細胞タンパク質合成技術で未来をつくる

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アプリケーションノート

IgG抗体Fabフラグメントの合成

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はじめに

ジスルフィド(S-S)結合は、細胞外へ分泌されるタンパク質や膜タンパク質の細胞外ドメインの立体構造形成に重要な役割を果たしており、そのタンパク質の機能発現にとって必要不可欠です。 真核生物において、ポリペプチド合成は還元雰囲気の細胞質内でおこなわれますが、S-S結合形成は酸化雰囲気の小胞体(ER; Endoplasmic reticulum)内部でおこなわれます。無細胞タンパク質合成系においても、タンパク質合成は還元条件でおこなうため、酸化雰囲気でおこなわれるS-S結合形成を還元条件下で実現させることは困難です。

 

そこで、弊社では、真核生物においてS-S結合形成反応に関与するProtein Disulfide Isomerase (PDI)とEndoplasmic reticulum oxidoreductase 1a (Ero1a)をコムギ無細胞合成系へ導入し、活性を保持したタンパク質を合成する条件の検討を進めています。 本実験では、抗AGIA-IgG抗体(ラビット)のFabフラグメントをテストタンパク質として用いました(図1)。Fabフラグメントには、S-S結合がH鎖およびL鎖それぞれに3本ずつあるだけでなく、H-L鎖間にも1本存在します。さらに、ペプチド結合がcis体であるプロリン残基も複数存在します。 このように、複雑な構造をしたFabフラグメントを合成し、抗原であるAGIA配列(EEAAGIARP)に対する結合能の有無を、プルダウンアッセイで解析しました。

 

aAGIA Fab1 

図1  ラビットIgG-Fabフラグメントの立体構造とS-S結合の位置(PDB 4HBC)

方法

タンパク質合成

タンパク質合成は、230ulスケールの重層法(15℃, 20時間)で タンパク質合成は、230ulスケールの重層法(15℃, 20時間)でおこないました。上層は、翻訳反応基質溶液SUB-AMIX-SGC (DTT free)を用いました。下層は、H鎖およびL鎖のmRNA、クレアチンキナーゼ(CK)、コムギ抽出液WEPRO7240Hの混合液に、さらに、PDIとEro1aまたはCyclophilin B (CypB)を加えて調製しました。(図2)     

 

                     aAGIA Fab2 

図2  タンパク質重層合成条件

 

プルダウンアッセイ

GST融合AGIA配列またはnegative controlのGSTを、Trisバッファー溶液(50mM Tris-HCl, pH8, 150mM NaCl & 0.1% Tween80)中でグルタチオンレジンと混和(4℃, 30分)後、未精製Fabフラグメント合成反応液(上層+下層)を加えて、さらに1時間混和しました。結合したFabフラグメントの検出は、グルタチオンレジンをTrisバッファー溶液で3回洗浄した後、 SDSサンプルバッファーで溶出およびSDS-PAGE後、CBB染色またはウェスタンブロットでおこないました。

 

結果

PDI&Ero1aおよびプロリン残基ペプチド結合 PDI&Ero1aおよびプロリン残基ペプチド結合のcis-trans異性化酵素であるCypBの下層への添加の有無により、4つの異なる条件で合成をおこないました。 さらに、各条件で合成したFabフラグメントのAGIA配列結合能を、プルダウンアッセイで確認した結果、 PDI&Ero1a添加条件で合成したFabフラグメント(図3A GST-AGIA Lane2&4)は、抗AGIA-IgG抗体(図3A GST-AGIA Lane5)と同様に、AGIA配列へ結合していることが確認されました。この結果は、ウェスタンブロットによっても確認されました。(図3B GST-AGIA Lane2&4)一方、PDI&Ero1aを添加しなかった条件では、CypBを添加した場合でも、AGIA配列への結合は確認されませんでした。 (図3AおよびB GST-AGIA Lane3)

 

 

aAGIA Fab3 

 

図3   Fabフラグメントの抗原結合能確認(プルダウンアッセイ結果)

A: CBB染色結果(Lane1: Added nothing, Lane2: +PDI and Ero1α, Lane3: +CypB, Lane4: +PDI, Ero1α and CypB, Lane5: antiAGIA-IgG)

B: ウェスタンブロット結果: H鎖C末端のHisタグで検出(Lane番号は同上)

考察

 以上の結果から、 PDI&Ero1aによって積極的にS-S結合を形成させることは、抗原結合能を持ったFabフラグメントの立体構造形成に重要であることが分かりました。一方、CypBの添加は抗原結合能に影響を与えなかったことから、コムギ無細胞合成系を用いた場合、プロリン残基ペプチド結合のcis-trans異性化反応は、Fabフラグメントの立体構造形成の律速段階ではないと考えられます。その理由としては、合成温度は15℃であること、および、コムギ無細胞合成系は真核生物由来であることから、ポリペプチド鎖の生成速度が穏やかであり、ポリペプチド鎖の折り畳み反応中に、プロリン残基のペプチド結合が異性化するために必要な時間が十分あるからであろうと推察されます。

 このように、コムギ無細胞重層合成系に PDI&Ero1aを添加することによって、抗原結合能を持った抗AGIA-IgG抗体のFabフラグメントが合成可能であることが分かりました。

 

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参考文献

1) yano, T. et al., PLoS One, 11(6): eD156716 (2016).

2) Bulleid, N.J., Cold Spring Harb Perspect Biol, 4: a013219 (2012).

3) Inaba, K. et al., EMBO J., 29(19): 3330-3343 (2010).

 

使用製品

WEPRO7240

WEPRO7240H

Hisタグアフィニティー精製用に最適化されたコムギ抽出液

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