ジスルフィド結合は、細胞外へ分泌されるタンパク質や膜タンパク質の細胞外ドメインの立体構造形成に重要な役割を果たしており、そのタンパク質の機能発現にとって必要不可欠です。真核生物においては、ポリペプチド合成は還元雰囲気の細胞質内で行われますが、S-S結合形成は酸化雰囲気の小胞体(ER; Endoplasmic reticulum)内部で行われます。
本製品では、当社独自のタンパク質合成法である「重層法」を応用することで、酸化的と還元的の2つの相反する環境の共存を実現させ、形成されたジスルフィド結合の維持できる環境を作り出しました。
またジスルフィド結合形成に必要となるヒト由来ジスルフィド結合イソメラーゼ(PDI)、酸化酵素Ero1αを用いることで、ジスルフィド結合がうまく形成されないことによって高次構造の形成や維持ができず、不溶化してしまったり活性が確認できないタンパク質に対して、積極的なジスルフィド結合形成を促進します。
使用例
活性を保持したtPAプロテアーゼドメインの合成
血栓溶解に関与する組織プラスミノーゲンアクティベータ―(tPA)のプロテアーゼドメイン(アミノ酸残基297-562; S-S結合6本)をテストタンパク質として用いた例をご紹介いたします。
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図1 A: tPAのドメイン構造とS-S結合の位置 B: tPAプロテアーゼドメインの立体構造(PDB 1BDA) |
タンパク質合成
供給相に通常条件のSUB-AMIX-SGC (4mM DTT)を用いた場合、 PDI&Ero1a mixを添加しても可溶化量に変化はありませんでした。しかし、SUB-AMIX SGC DTT-freeを用いると、 それだけで可溶化量は1.9倍になり、さらにPDI&Ero1a mixを添加することによって3.8倍に増加しました。
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図2 tPAプロテアーゼドメインの可溶化量 |
活性測定
tPAプロテアーゼドメインの活性を測定した結果、供給相にSUB-AMIX-SGC (4mM DTT)を用いた場合は、PDI&Ero1a mixの添加の有無に関わらず、Negative Controlと同程度であり、活性は確認できませんでした。一方、SUB-AMIX SGC DTT-freeを用いた場合は、活性が確認され、PDI&Ero1a mixの添加によって、さらに活性が3倍に上昇しました。
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図3 tPAプロテアーゼドメインの活性測定 A: タイムコース測定 B: 活性(1 µg当りの反応速度) |
供給相の酸化還元状態、および PPDI&Ero1a mix添加の有無によって、可溶化量と活性の両者で顕著な差が表れた理由は、形成されたジスルフィド結合は酸化雰囲気では安定に保持されるが、還元雰囲気では速やかに還元され切れてしまうことによると考えられます。このように、コムギ無細胞重層合成において、供給相にSUB-AMIX SGC DTT-freeを用い、さらに反応相にPDI&Ero1a mixを添加することによって、ジスルフィド結合が効率的に形成され、活性を保持したtPAプロテアーゼドメインが合成可能となります。
※アプリケーションノートでも詳しく紹介しています。
アプリケーションノート
ジスルフィド結合タンパク質合成キット・セット
Disulfide Bond PLUS Expression Kitはじめての方でも簡単にお使いいただけるように設計されたエントリーモデルキットです。 導入検討や発現確認におすすめです。 |
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Disulfide Bond Enhancer Enzyme SetWEPRO7240H Core Kitと組み合わせて使用することで 反応スケールを自由に変更して目的タンパク質が合成可能です。 少量スケールでの複数サンプル合成 、目的収量へのスケールアップ合成におすすめです。 |
※GSTタグ融合タンパク質として合成・精製する場合には、精製時の溶出液に含まれる還元型グルタチオンでジスルフィド結合が切断されてしまうため、本製品はご使用いただけません。
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