タンパク質複合体合成への応用
はじめに
エイズの病原ウィルスであるHIV の感染者は世界中で約3670 万人を越え、毎年ほぼ180 百人が新たに感染しています(2016 年末時点)。現在ではカクテル療法の確立により、感染患者の生命予後は改善された一方で、既存の薬剤に対する耐性が現れており、新規治療法が常に期待され様々な研究が進められています。エイズの病原ウィルスであるHIV の感染者は世界中で約3670 万人を越え、毎年ほぼ180 百人が新たに感染しています(2016 年末時点)。現在ではカクテル療法の確立により、感染患者の生命予後は改善された一方で、既存の薬剤に対する耐性が現れており、新規治療法が常に期待され様々な研究が進められています。細胞内の情報伝達制御因子SOCS1 は、HIV 感染細胞内で発現が誘導され、ユビキチンリガーゼコンプレックスを形成し核の周囲でウィルス粒子構成因子のGag タンパク質の細胞間輸送と安定化していると考えられています。今回、コムギ無細胞タンパク質合成システムの利点を活かした共発現により、SOCS1 を含む4 種類のタンパク質から構成されるユビキチンリガーゼコンプレックス(E3 複合体)の合成を試みました。
方法
SOCS1 は、他の4種類のタンパク質、Culllin2, Rbx1, B (Elongin B), C (Elongin C) と複合体を形成します (図1)。
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図1 精製されたE3複合体の模式図 |
図2 E3 複合体合成・精製の流れ |
それぞれの遺伝子をコムギ無細胞タンパク質合成専用発現ベクターpEUベクターにクローニングし、発現鋳型を構築しました。プレ試験にてそれぞれ単独で合成した際にもっとも収量の少なかったCullin2のN末端に、合成後のプルダウンにより精製するためのGST-tag遺伝子およびGSTを切り出すためのプロテアーゼサイトを付加しました。
それぞれ構築した鋳型を混合して転写し、転写後の混合したmRNAとコムギ胚芽抽出液WEPRO®7240Gおよび基質SUB-AMIX® SGCと共に透析カップに分注し共発現しました。合成後はGSTによるアフィニティー精製およびプロテアーゼ処理(PreScission Protease)により GST-Tagを切り出しE3複合体を精製しました。精製されたE3複合体はMicroconを用いて濃縮・バッファー交換を行いました。
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図3 透析カップを用いた翻訳反応 |
結果
図4において、 SDS-PAGE/CBB染色による確認により、E3複合体の精製産物が得られました。
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図4 E3 複合体の合成・精製結果 |
参考文献
M. Nishi et al. (2009) Requirement for microtubule integrity in the SOCS1-mediated intracellular dynamics of HIV-1 Gag FEBS Letters 583 1243-1250.M. Nishi et al. (2009) Requirement for microtubule integrity in the SOCS1-mediated intracellular dynamics of HIV-1 Gag FEBS Letters 583 1243-1250.
使用製品
WEPRO7240G Expression Kitタンパク質合成に必要な試薬類がセットがなっています。 少量スケール多サンプル合成、目的タンパク質の大量合成などに最適です。 |
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WEPRO7240GGSTタグアフィニティー精製用に最適化されたコムギ胚芽抽出液 |
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SUB-AMIX SGCWEPRO7240シリーズ用の翻訳反応基質溶液です。 |